ADHDの架空症例

24歳の男性。
小学校では順番でない時に発言したり、試験の時に頻繁にケアレスミスをする、宿題を忘れる、静かに座っていることが難しいなどの特徴があり、母親はたびたび学校に呼び出されていた。

それでも、愛想がよく、ユーモアもあり、人を楽しませる性格だったので、クラスには友人も多かった。

高校3年生の時には、共通試験の出願の締め切りに間に合わせることができず、結局私立の大学に進学した。

大学ではコンビニのバイトをしたが、レジ打ちのミスが頻繁だったためクビになり落ち込んだ。

免許を取ってから1年の間に、自動車の運転で2回事故を起こしたことがある。

テレビでADHDについて知り、ネットで調べてみたらかなり自分に当てはまっているとのことで、検査を希望して精神科を受診した。

検査の結果、ADHDと診断されストラテラが開始された。

スーパーでのバイトを見つけ始めたところ、レジ打ちのミスは以前コンビニで働いてた時よりもだいぶ減り、その後もバイトを継続している。

ADHDとは(要約)

注意欠陥・多動性障害 (ADHD)は幼児から成人まで、幅広くみられる疾患で、注意を持続できないことや、衝動性(急に走り出す、叩いてしまうなど突発的な行動)や多動性(動きが多い、落ち着きがない)が目立つことが特徴的です。

ADHD には遺伝や体質などが関係しているという明らかな証拠が示されています。

ADHDは学童の5~8%にみられるとされれます。

その兆候は12 歳になるまでに認められます。(以前は7歳までとされていました。)

ADHD の診断を確定するには、不注意および/または多動性–衝動性による機能障害が2つ以上の状況・環境(学校や家、職場など)において存在し、社会的、学業的機能を損わせていなければならないとされています。

徐放性の精神刺激薬やノルエピネフリン再取り込み阻害薬などにより治療することで注意力が衝動性が改善することが期待できます。

 

ADHDの患者さんの割合は?

小学生におけるADHDの割合は100人に5~8人と報告されています。

男女では男児の方が多いです。

両親や兄弟がADHDの場合、そうでない人に比べてADHDの発症率は2~8倍になります。

また、ADHDの患者さんの兄弟は、ADHDでなくても、学習障害や学業不振を呈する率が高くなるという報告があります。

ADHDの症状はたいていの場合、3歳までにその特徴がみられるようになりますが、診断されるのは幼稚園や小学校に入って教師が同年代の仲間と比較できるようになってからです。

ADHDの特徴

  • 多動性、注意欠如(注意が続く時間の短さ、気の散りやすさ、課題を最後まで終わらせられない、不注意、集中力の不足など)
  • 衝動性 (思いつきの突発的な行動、めまぐるしく変わる活動、段取りの悪さ、授業中の立ち歩きなど)
  • 記憶や認知の問題
  • 限局性学習症(全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のこと。例えば、知的には低くないのに「算数ができない」、「字が書けない」、「字が読めない」など)
  • 会話や聴覚の障害など

また、ADHDをもつ子どもは攻撃性や反抗的態度などの行動をすることが知られています。

ADHDの経過と予後

ADHDと診断された子供のうち、40%は思春期か成人期早期までに寛解します。

ADHDと診断された子どものうち青年期まで症状が続くのは 60~85% 、成人期まで続くのは 60%です。

たいていの場合、まず寛解する症状は過活動であり、気の散りやすさ(転導性の亢進)が最も消失しにくいです。

ADHDが小児期中期に寛解することは通常はなく、寛解するのはたいてい12~20歳の間です。

しかし、この障害を有するほとんどの患者は部分的に寛解するものの、反社会的行動や物質障害、気分障害といった問題を抱えやすいです(二次障害と言います)。ADHD の症状が思春期まで持続すると、素行症を呈するリスクが高いと言われています。

ADHDの治療目標

治療目標は決してADHDの症状が完全になくなることではありません。

それらの症状の改善に伴い学校や家庭における悪循環的な不適応状態が好転し、ADHD 症状 を 「自分らしさ」=「自分の個性」 として折り合えるようになることに置くべきであるとされています。

ADHDの治療薬

薬物療法としては、中枢神経系の精神刺激薬であるメチルフェニデート(コンサータ)やノルエピネフリン再取り込み阻害薬であるアトモキセチン(ストラテラ)、選択的α2アドレナリン受容体作動薬であるグアンファシン(インチュニブ)、リスデキサンフェタミン製剤(ビバンセ)などで治療します。

ストラテラ

  •  アトモキセチン製剤
  •  主に脳内のノルアドレナリンの働きを強める作用をあらわす
  •  コンサータに比べてマイルドに効きやすい(悪く言うと、キレがない)
  • 効果が得られるまで数週間を要する

インチュニブ

  •  グアンファシン製剤
  •  主に脳内のノルアドレナリンの受容体であるα2A受容体を刺激し、シグナル伝達を改善する
  • 他の薬に比べて、多動と衝動性と感情に対する効果が期待できる

*コンサータとビバンセは当院では処方しておりません。

参考文献
今日の精神疾患治療指針 第1版 医学書院
カプラン 臨床精神医学テキスト 第3版 MEDSi
ADHDの診断治療指針に関する研究会 注意欠如・多動症-ADHD-の診断治療ガイドライン 第4版 じほう

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